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2016年12月26日 (月)

4回目の入院(3)・リハビリ

手術は成功した。
にぎりこぶし大の腫瘍は2度にわたる手術で ”キレイに”取り除かれた。
生命はもちろん、心配していた失明のリスクもなくなった。
けれど…、
・めまいやふらつきがひどく立って歩くことができなかった。
・焦点が合わず目の前にあるモノをよく見る事ができなかった。
・呂律(ろれつ)がまわらず言葉をはっきり話すこともできなかった。
小脳失調の症状が残り、主に運動機能の障害として表れているのだった。

「大きな腫瘍が神経を圧迫していたのです。
 腫瘍はキレイにとれたけれど、神経が圧迫されていた影響でマヒが残っているのです。」
Dr.は言った。
「マヒは改善します。一ヶ月、二か月、あるいは半年先かも…。
 時間はかかるけれど、必ず少しずつ改善していきます。」
「できるだけ早く退院できるように頑張りましょう。
 退院した後のリハビリも検討しましょう。」
19日には点滴も終わり本格的なリハビリが始まった。

土・日を除く毎日9時30分頃、机の上に次のように書かれた3枚のカードが置かれる。
「言語 9:30~」「歩行 10時30分~」「作業 14:00~」  
時間に近くなると看護師(介護師)、時には先生が迎えに来てくれる。
まだ自力で歩くことはできない。リハビリ室への移動は車椅子。
出来ることは少ない。今の状態で出来ることから始めるだけだ。
まずは「自分の足で歩くこと」を目標に頑張ろう。リハビリ室に向かう車椅子の上で強く思った。

ST(言葉)
前回もお世話になったNag先生。リハ室までの送り迎えをしてもらえることが多かった。
行きも帰りも言葉を交わすことができる。そのこと自体が言葉のリハビリとなっていた。
3階にある言語聴覚室では検査の他に次のような発音・発音・言葉の訓練が行われる。
(このブログを読んでいる皆さんも試してみませんか?)
<例1> 
 ①パ・パ・パ… 10秒間に何回言えるだろう  
 ②タ・タ・タ… 10秒間に何回言えるだろう
 ③カ・カ・カ… 10秒間に何回言えるだろう
 ④パタカ・パタカ・パタカ… 10秒間に何回言えるだろう
<例2>シャ・シュ・ショ、リャ・リュ・リョなど拗音を含む言葉や発声しにくいサ行やラ行の短文音読
 当時モノをはっきり見る事が出来なかったので、先生の発音を真似て
 ①修学旅行で急行列車に乗りました
 ②臨時列車は6番線から発車します …など

「ゆっくり」「はっきり」「音節ごとに区切りながら」…。
できなかったことが少しずつできるようになっていく過程が楽しい。
しかしもっと楽しいのは自分の考えや気持ちを相手に伝えることができることだ。

病室の通常はカーテンに囲まれた3m四方の空間。自分の気持ちや感情を伝える相手もいない。
だから絵を見て物語を作ったり、短文の続きを作ったり、課題として与えられた言葉を説明したりなど
想像力を働かせ、自由に会話のできることが楽しかった。

先生は自分のパソコンをボクのホームページに接続し話の糸口を作ってくれたりもした。
ボクは北アや南ア・丹沢など、山歩きの楽しさや自然の素晴らしさをお伝えしようと一生懸命になった。
こうしてボクはSTの時間が楽しくて楽しくて、その時間の来ることが待ち遠しくなっていた。

OT(作業)
今回の担当はUed先生。がっしりした男性セラピスト。
前回入院時(2016年6月)にお世話になったKus先生はお休み。産休とのこと。
夏になったら八ヶ岳に行きたいと言っていたけれど…。

リハビリセンターの入口から右に入ったところにOTのコーナーがある。
作業机や模擬台所・風呂場など家庭で必要な日常活動の練習ができるような施設や道具がある。

机の一角に座り今日のリハビリが始まった。
「それではこのペンの先を目で追ってください。」
カラーペンを持った先生がペンをゆっくりと左右に動かす。ボクは顔を固定したままキャップを目で追う


右の端から正面右約15°までの間は正常に見ることができる。
しかし正面から左へ動くにつれ焦点が定まらなくなった。ペン先が二重に見え目がひどく疲れるのだ。
ボクの目は運動性が悪く(特に左眼球)、左右の眼から入ってくる視覚情報がシンクロしていないのだった.


指や腕など上肢の運動に目のトレーニングが加わった。

<例1>コイン入れ
「貯金箱にコインを入れましょう。」
机の上に十数枚のコインがバラッと散らばった。コインをつかもうとした指が空をつかんだ。
1枚1枚のコインも貯金箱の投入口も二重に見えるのだ。
十数枚がその2倍、コインがとてつもなく大量にあるように見えた。
虚と実、二重に見えるコインの虚をとろうとして空をつかんだのだった。

001

                虚と実(どちらが実態だろう?)

「片方の目を手のひらで隠してやってみましょう」
今度は正しくとることができた。が…、距離感をつかむことができず正しく入れることができなかった。

<例2>お手玉のキャッチボール
1mほど離れて座っている先生がお手玉を投げる。それをボクは両手でキャッチする。
最初はなかなか取れなかった。しかし慣れるうちにだんだん取れるようになってくる。
すると先生は少し距離を離す。1.5m、2m…。距離があると少し難しい。
しかしそれでも次第に目が慣れてくる。今度はわざと左右に振るように投げる。
右方向からくるお手玉は取れる確率が高い。
しかし左方向からくるお手玉は外す回数が多かった。

動きのあるものを眼で追う。外した時は悔しい。
しかし「コイン入れ」も「お手玉キャッチ」も楽しかった。
ゲームそのものががトレーニングになっているのだから。
こうしてボクは、OTの時間も心待ちするようになっていた。

PT(歩行)
「行きましょうか」
時間が近づくと看護師(介護師)さんが車椅子を押して迎えに来る。
時計を見ながら待っていたボクは
「お願いします。」
とベッドの縁に腰をかける。
ブレーキで固定した車椅子を支えにし、体を回転させるようにして乗り移る。
このころはベッドから車椅子への乗り移りは自力でできるようになっていた。

エレベータで2階に降り長い廊下を通ってリハビリセンターに向かう。
教室が4つ分ほどの広さのリハビリセンター。壁際には順番を待つ患者さんの車椅子が列を作っている。
「お待たせしました。あちらのベッドまで進みましょう。」
前回もお世話になった理学療法士のHagさんに声をかけられてようやくボクの番がくる。

ベッドに腰をかけたまま膝を曲げる。曲げた脚の脛付近を押さえ
「膝を伸ばしてください。」という指示で思い切り力を入れる。
「だいぶ力がありますね。」

ベッドに仰向けになり片方の足を曲げる。曲げた足の踵付近を押さえ
「蹴るように思い切り伸ばしてください。」指示に従って思い切り蹴るように伸ばす。
「すごい、すごい。ボクの方が負けそうです。」

足の踵で一方の膝を打ち脛に沿ってスーッと伸ばす。
以前できなかった「トン・トン・トン・スー」も、このころにはスムースに出来るようになっていた。
仰向け片足上げや四つん這い片足上げ、仰向け腰上げ…。脚の力はそれほど落ちていないようだった。

リハビリ室の中央には3本の平行線が記されている。長さは10mほど。
「真ん中の線に沿って歩いてみましょう。」
線の起点に立って前を見た。平行線のはずが複数の線が交差しているように見えた。
頭の中がクラッとして足元がふらつき、一歩を踏み出すことができなかった。
腰を支えてもらいやっと先端まで進んだとき、肉体ではなく気持ちの疲れをひどく感じた。
安定して歩くためには目から入る情報が重要であることを改めて感じた。

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                    平行線のはずなのに(イメージ)

平行棒の間に立つ。
A.足を肩幅に開いて立つ。少しふらついたが何とかクリア。
B.両足を揃えて立つ。左右に振れる上体(重心)を支えることが難しい。
C.足のつま先をもう一方の足のかかとにくっつけて立つ(つぎ足)。体が横に振れて5秒とできなかった。
D.片足で立つ。右足も左足もすぐにふらつき1秒とできなかった。

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                                   バランス

上体を支える足の接地面積が小さくなるほど体の安定を保つことが難しかった。
安定した歩行は片足立ちの連続だ。安定して歩くためには身体のバランスを保つことが必要だ。

04

                                 歩行

①体幹を中心に筋力をつけ、
②バランス能力を高めること、
③目のトレーニングを中心にモノの見え方を改善すること。
これがボクの当面の課題と言えるだろう。

課題がはっきりしているのはよいことだ。取り組む目標を具体的に見据えることができるから。
土・日やリハビリのない時間にも、ボクは部屋で出来そうな自主トレに取り組むようになった。

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