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2017年2月 9日 (木)

東病院編:リハビリ2

6:00 起床
7:00 朝食
    <リハビリ>
12:00 昼食
    <リハビリ>
18:00 夕食
21:00 就寝準備
22:00 消灯

スタートライン>

リハビリは毎日行われる。(土・日・祭日はPTとOTのみ)
夕方には予定表が配られるので翌日の心積もりができありがたい。

転院して三日ぐらいたてば病院生活にも慣れてくる。
リハビリのない時間このまま何もしないで過ごすことがもったいないように思えた。
ボクの障がいは今、どんな程度なんだろう? 回復はどこまで進んでいるのだろう? 
現状を踏まえた上で「もし退院できたらやりたいこと」を書き出してみた。

自覚している症状:
・目の焦点が合わず、見るものが二重に見える。(視覚障がい)
・ろれつがまわらず言葉がスムーズに出てこない。(言語障がい)
・めまい・ふらつきがあり、バランスよく安定して歩くことができない。(歩行障がい)
 …

やりたいこと:
・本や新聞、ネットなどを通して好奇心を満たしたい。
・会話やパソコンなどを通して自分の考えや思いを発信したい。
・家庭内の日常活動、特に料理など作れるようになりたい。
・近隣の公園や丘陵地はもちろん、野山を再び自由に歩きたい。

やりたいこと(目標=希望)がはっきりしたら実現に向かって具体的に努力するだけだ。
目標は早速先生に伝え、その後のリハビリ計画にも取り入れてもらった。
行動を始めるにあたって早いとか遅いとかなんかはない。
いつだって今が "スタートライン" なのだから。



ST=言語(言語療法):

発話など主にコミュニケーションの機能訓練

眼のトレーニングや言葉のリハビリに加えて自由会話の時間は楽しい。
話を最後まできちんと聞いてもらえることは何よりもの励みになる。
加えて
音声が言葉として発せられる仕組みや日本語の成り立ちなどは知的好奇心を刺激する。
知らなかったことを知ったからといって実際の生活に直接役立つわけではない。
けれど好奇心が満たされると気持の上でも満足感が広がるような気がする。
気持の充足感は生きる意欲にもつながっているような気がする。

発声と共鳴・構音>

のど仏の少し上を左右の指で軽く押さえ「あ~」と声に出す。指先にかすかに振動を感じるだろう。
口を横に開いて広頸筋を緊張させ「い~」と声に出した方がより振動を感じやすいかも知れない。
・肺からの呼気が声帯を振動させ音声に出すことを発声という。
・咽頭や口腔・鼻腔(共鳴腔)の形を変化させることで音声に特徴が生れ
・さらに舌や歯、唇をさまざまに変化させて音声の流れを変えることで
 言葉としての音声を作ることを構音という。
※発声も共鳴も構音も、全て脳神経の働きによって制御されている

「今週は声を『見て』みましょう!」
「えーっ! 『聞く』のではなく『見る』のですか?」
そう、声は見ることができるし、その状態を分析することさえできるのだ!!

通常は3階の言語聴覚室で行われる言葉のリハビリ。この日は1階にある教室に場所を変えた。
机の上に小さな機械とパソコン、ディスプレイ、マイクがセットしてある。
大きく息を吸い込みマイクに向かって「あ~」と声に出した。
ディスプレイにスケッチのような波形が見えた。
声は空気の振動である。空気の振動を電気信号に変えて視覚化しているのだ。

01
                                     声を見る

波の形をよく見ると、最初は一定だが時間が経つにつれ切れ間が見えてくる。
息が続かなくなり声が途切れてくるのだ。
安定して声を出すためには一定の時間が15秒以上、目標として20秒は必要だそうだ。

リハビリを始めた頃のボクの安定した発声時間は10秒そこそこだった。
呼吸の仕方、声の出し方、声帯のトレーニング…。
リハビリを続けることで後半には15秒=目標時間=を安定して越えることができるようになった。

02
                    発声練習(声帯のトレーニング)

声帯>

ボクの声は少しかすれている。加齢のために声帯がゆるみしゃがれ声になる場合があるという。
ボクの場合は加齢のためか失調によるものなのか。原因を探るため声帯を見る検査があった。
自分の発声器官を自分の眼で見る事ができる。これほど興味深いことはめったに訪れないだろう。

2階にある耳鼻科・検査室。鼻から喉頭内視鏡を入れる。
「今、〇〇です。」。
鼻腔-咽頭-喉頭蓋、更にその奥へ…。次々に映し出されるモニターの画像に見入った。
つばを飲み込もうとしたとき一瞬画面が白く消え、
「あ~」とか「い~」とか声に出した時、
膜のようなものが閉じて細かく震えている様子が見えた。
震えている薄い膜が声帯だ。
声帯がぴったりと閉じピーンと張っていれば「伸び・艶のある声」になる…と後の説明で聴いた。

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                          声帯(イメージ)

ボクの場合
・左の声帯がやや痩せている。
 体重の減少や左半身の筋力がやや低下しているのと関連しているのかもしれない。
・神経のマヒは大きな手術の後なので、体重増加や筋トレで改善するかどうかは分からない。
 ただ筋力は使わなければすぐに衰える。
・音読、会話など声に出す、大きな声で歌うなど、声を出すための筋肉も積極的に使おう
…という診断だった。



PT=足(理学療法):

歩行・階段など主に足を使う日常生活の機能訓練

通常は3階のリハビリ室で行われる。
歩行器や杖を使った外歩きのリハビリも始まった後半は1階のリハビリ室で行うことも多くなった。
小さな体育館とでもいえそうな広さでリハビリ用のベッドはもちろん大形の訓練機器も充実している。

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                    1階リハビリ室

リハビリの中心課題は
①体幹を鍛えバランス能力を高める
②安定した歩行
であり、具体的な内容は前回書いた通り。

課題を実現させるためにはいくつかの段階とチェック項目があり、
項目を一つ一つクリアしていくことが求められる。

移動を例にとると…車椅子→歩行器→杖→フリー…という段階がありそれぞれにチェック項目がある。
・車椅子による移動
 付き添い(介護)→見守り→自立(フリー)↓
                   ・歩行器による移動
                    見守り→自立↓
                          ・杖など補助具利用による移動
                           見守り→自立(フリー)

それぞれの段階をとばす(抜かす)ことはできない。リハビリは段階を踏みながら進められる。
こうした段階は食事、薬の服用、入浴施設の利用、トイレの利用など入院生活の全てに適用されている。
専用の車椅子や歩行器がいつもベッドの脇か部屋の入口にあり、必要なときはいつでも使うことができる。

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               ボクが使っていた車椅子

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          ボクが使っていたキャスター付き歩行器

一つのピークに到達すると次のピークが見えてくる。そのピークに達するとまた新たなピークが見える。
こうして細かなピークを一つひとつ登って行くことで最終的に目的としていた山頂に到達している。
大きな目標(最終目標)は難しくても、現在の力を基にした小さな目標ならクリアすることが可能だ。
(いちいちチェックされることを)煩わしい、面倒だ…と感じる患者さんも多いようだけれど、
山の好きなボクはこうして山歩きに例えながら課題の実現に向かった。

歩行器がフリーになる頃、ボクは病棟(西棟3階)の長い廊下を歩行器を利用した自主トレに励んでいた。

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1日に5~10往復。何日間か歩いた時の端から端までの平均歩数は104歩だった。
たまたま同じ頃1階のリハビリ室で歩行テストがありボクは16mを24歩で歩くことが分かった。

このことから、
・1歩当たりの歩幅=距離÷歩数=16m÷24歩=およそ0.67m/歩
・病棟の長さ=歩幅×歩数=0.67m/歩×104歩=およそ70m

自主トレで5往復すると、
・歩いた距離=長さ×往復回数=70m×5×2=700m

これはボクの家から大野駅近くのスーパーに行ってもおつりのある距離だ。
こうしてボクは病院にいながらスーパーに何回も買い物に行くことを想像することができたのである。

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                    丹沢を見る(食堂から)

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                    丹沢を見る(病室から)

更に自主トレの往復回数を10往復、20往復と増やすことで歩く距離を2km、3kmと延ばすことができる。
窓から見える丹沢・大山の稜線や尾根や谷。ボクは居ながらにして山歩きを楽しんでいる想像さえできたのだ。



OT=手(作業療法):

食事・洗濯・炊事など主に手を使う日常生活の機能訓練

東病院で初めてOTのリハビリを受けたのは転院して2日目、9月2日(金)だった。
この日の日記には
”・リハビリ室の棚には面白そうな道具がたくさんあってこれからのリハビリが楽しみ。
 ・担当の女性は山歩きが好きで40lのザックを背負って歩くという。山の話も楽しみ。”
…と書いてある。

リハビリは毎回腕や肩・首の筋肉を解きほぐす事から始まる。
とりわけ首筋のマッサージは眼の奥がツーンとするなど頭が軽くなるような気がして心地良かった。
風船バレーやバランスボールのキャッチなどゲーム的なリハビリも楽しくて次の時間が待ち遠しかった。

リハビリプログラム>

驚いたことがある。お手玉ピッチャーをしていた時のこと。
キャッチミットに見たてた的(カゴ)の中にお手玉を投げ入れる動作。
始めは下手投げだった。
だんだん慣れて距離が伸びても(3~4m)入るようになった。

「じゃあ、今度は上から投げてみましょう!」
野球のピッチング動作を想像してみよう。ボールを投げる時、体はどのように動くだろう?
(右投げの場合)、
①投げる前、重心が右足に乗っている。
②投げる時、腰や肩が1/4以上回転する。
③投げ終わった後、重心が左足に移動している。
…こんな一連の動作が自然にできているのだ。
まだ車椅子での移動で、安定して立ち、歩くこともできなかったボクが!

「とてもきれいな投球モーションをしている人がいる」
同じ時間帯にリハビリをしていた患者さんが言っていた…と後で聞いた時は自分でも不思議に思った。
歩行に欠かせない体重移動が無意識のうちにできている。プログラムの内容がそれほど優れているのだ。

キャスター付き歩行器で見守り歩行ができる段階に入った頃
ゴム風船を左右の手で交互に打ち上げながらリハビリ室を一周する。というプログラムにも取り組んだ。
廊下と部屋で空気の密度が異なる。歩くことでわずかなな風が起こる。
そんな空気の微妙な動きに風船の動きも微妙に変化する。しかも右・左と交互に手を使うのだ。
オットット…、足がもつれて体がよろめく。しかし無意識のうちに足がパッと出て倒れようとする体を支える。

しりとりをしながら風船バレーをする。というプログラム。
課題の言葉を上げながら打ち返す。しかも一度上げた言葉は使えない。最初の2~3往復は調子よい。
しかし2~3往復で4~6個の言葉が上がる。課題の言葉もそんなにたくさんはでてこない。
う~ん、考えているうちに風船を打ち損じてしまう。ラリーが続くのはせいぜい3~4往復までだ。

このプログラムは微妙に難しい。けれど楽しい。体だけでなく頭も集中して働かせている!
複数の作業を同時に行う「デュアルタスク」。脚だけでなく頭を鍛え転倒予防に効果があるという。

調理実習>

リハビリ室の棚には様々なグッズが置いてある。その中に"ままごとセット(?)"もある。
「今日は料理を作りましょう」
棚から取り出したままごとセットの包丁やお皿をリハビリ用作業机の上に運ぶ。
シリコン粘土を細長く伸ばしキューリに見たてて薄切りにする。
粘土は時にはダイコンやジャガイモ、餃子の皮や餡にも形を変える。
ボールの中で練ったり混ぜたり、お椀に水を入れてこぼさないように運んだり…。
料理作りはままごとのような真似事でも十分楽しい。

ある日先生に聞かれた。
「何を作りますか?」
ままごとではない。本物の料理を作るのだ。妻に頼んで料理の本を持ってきてもらった。
まだ文字を読むことは出来なかったが、出来上がった料理のカラフルな写真を見るだけでも楽しかった。
その中でボクが選んだのは「肉じゃが」。妻に材料と手順を書きだしてもらった。
今まで自分の家で料理を作ったことはあるけれど、リハビリの一環として病院で実習ができるなんて!
数日前から嬉しくて、料理本の写真を見たり妻が大きく書いてくれたレシピの手順を何度も確認したりした。

実習は1階にあるOT用リハビリ室で行われる。
部屋の一角に食器棚や冷蔵庫、システムキッチンまで整備されていることに感心した。
前日に渡したメモを基に、全ての材料は先生が用意してくれた。栄養部を通して「出汁」まで準備してある!
食材の皮をむく、一口大に切る、炒める、水と調味料を入れ、アクを取りながら煮込む。
先生と妻が見守る中作業して作るのはボク。30分ほどで完成、試食。

「甘すぎる!」
妻の評価はいつも辛口だ。しかし肉じゃがは確かに甘すぎた。
計量スプーンについた油をそのままにして砂糖を量ったからだ。
スプーンの油に余分な砂糖がくっつき甘さが増したのだった。
量は正確に量ること、使った用具は水気や油気を拭きとること。
原因が分かれば次に備えることができる。多少の失敗はあったけれど調理実習は楽しかった。

メニューを考える、材料をそろえる、手順を考えて調理する、盛り付ける、食べる、片づける…。
デュアルタスク(二重課題)の要素がたっぷりの「料理作り」は認知症予防や転倒防止に最適なリハビリなのだ。
退院し自宅リハビリに励んでいる現在、食後の片付けや朝食作りはボクの分担になっている。
ちなみにこのブログの下書きを書いている日(2017/02/07)、朝の食卓は…。

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ミルクの野菜スープ(白菜、ブロッコリー、ジャガイモ、タマネギ、ハム、牛乳)
温野菜サラダ(ウィンナソーセージ、キャベツ、ジャガイモ、ニンジン、トマト、キュウリ、モッツァレラチーズ)
くるみパン、ヨーグルト、バナナ

食欲のあることは良いことだ。
食事はこれから始まる一日の活動を保証するエネルギーの確実な源(みなもと)だから…。

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