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2017年3月19日 (日)

東病院編:実習_

<ステップ>

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課題の先に次の課題。その課題の先にまた課題。課題をクリアする度に新しい課題が見えてくる。
一歩また一歩。これは山登りと同じだ! 自力歩行(フリー)=退院=まであと少し。

車椅子で東病院に転院してきたボクがリハビリを続けることで、出来ることが少しずつ増えてきた。
「〇〇ができる」から「〇〇をしている」へ! 退院する日が次第に近づいている。

その頃、退院し自宅で生活している自分をよく想像した。
・近くのスーパーへ買い物に行ったり、近隣の公園や緑地を歩いたりしている自分。
・家庭での日常作業、特に調理。レシピを見たりアレンジしたりしながら食事を作っている自分。
・新聞や本を読んだり、インターネットを通して自分の考えを発信したりしている自分。

またその頃、こんな夢も見た。
いつ頃だったか、どこでだったか? 騒がしい教室の中に長い棒を持ちイライラしている自分がいた。
バシーッ! 強く机を叩いた。静かにさせるつもりだったのだろうか。
言葉ではなく力で抑えようとする自分を、悲しく見つめるもう一人の自分がいた。
              -眠れない夜、浅い眠りの中で見た夢の一コマ-

ふらつく・よろめく、目の焦点を合わせることができずめまいまでしてひどく疲れる…。
自分の体なのに思い通りにコントロールできない自分に苛立っていたのかも知れない。
リハビリを頑張っているつもりなのに、自分の内心をかいま見たような気がしてそんな自分を怖いと思った。
自分に甘くなりがちな期待感もあり、自分の努力を正当に自己評価することは難しい。
第3者の眼にボクはどのように映っているのだろう? 客観的な評価を知りたい。…そう思った。

<実習>

「学生の実習をお願いできませんか?」
9月の終わりごろそんな話があった。
学生にとっては学んだことを実際の場で実践・研修する機会。
と同時にリハビリを続け社会復帰を目ざしているボクにとっては
自分の状態について客観的に評価してもらえるまたとない機会。
「承知しました。よろしくお願いします!」
即座に返事した。

その頃のリハビリで、OTでは主として上肢を使ったバランス運動、
PTでは体幹を鍛えたり下肢を使ったバランス運動に取り組んだりしていた。
また天気の良い日には杖やシルバーカーを使った外歩きにも取り組み始めていた。
      (入院記・東病院編:リハビリ2参照)


OT:


上肢の運動を通してバランス感覚を改善する
 ・お手玉キャッチ ・お手玉ピッチャー ・バランスシートの上でバランスボールをキャッチ
 ・デュアルタスク(同時に複数の作業を行う) ◎棒体操  …

 ◎棒体操
 
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棒を水平に持ち上下に動かす  棒を水平に持ち左右にひねる
 (重りをつける場合もある)  (重りをつける場合もある)
                           …など


PT:


体幹を鍛える。下肢の運動を通してバランス感覚を改善する
 ・バランスボールブリッジ ・片足ブリッジ ・膝立ち歩行(前後・左右)
 ・脚の横振り(前後・左右) ・継ぎ足歩行 ◎四つ這い片手-片足あげ  ◎クロス-ステップ …
                            

 ◎四つ這い片手-片足あげ
  四つ這いになり足を後ろに伸ばし、反対の手を前に伸ばす

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 ◎クロス-ステップ
  足を前-後ろ-前…と交互にクロスさせながら横に歩く
 
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                           …など

外歩き:

1階リハビリ室-正面玄関-(左回りに)-駐車場-地下トンネル-桜並木-正面玄関-リハ室ビリ室
 ・時には重りを入れたザックを背負い病棟東側のちょっとゴミゴミした雑木の歩道を歩くこともあった。
 ・外の空気は気持ち良かった。雨が降った後の翌日の散歩(?)は土や木々の湿った匂いが心地良かった。
 ・木々が緑から赤茶色に、空が白っぽい青から濃い青色に…と変わっていき
  夏から秋へと進む季節の変化と同時に入院生活の長さを思わせた。

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桜並木(2016/09/10)

 

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女郎蜘蛛(2016/10/19)
  

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枝を透かして秋の空(2016/10/24)

今まで頑張ってきたリハビリ、
現時点での到達点(評価)はどこだろう? 
次に目ざす目標は何だろう?
"その日"の来ることが楽しみだった。

<実習1> 10/14(金)

指導者のSak先生と医療衛生学部リハビリテーション学科3年次生・5名の学生が病室で待つボクを迎えにきた。
一緒に1階リハビリ室に下り、まず簡単な自己紹介。そして実習が始まった。

「s-okさん、こんにちは。リハビリ学科の〇○です。三日間よろしくお願いします」
「失礼します。それでは検査を始めます。今日は肘やひざの動きを検査します。
 靴を脱いでベッドに上がり、仰向けになって足を伸ばしてください。」
(実際の言葉とは違うかもしれない。しかし何のために何をするのか意義まで説明していることが印象的だった)
表情や言葉から緊張している様子が何となく伝わってきた。
しかし患者(ボク)に対してまじめに真摯に向き合おうとする一人ひとりの姿に好感が持てた。

まだ学生だった頃、教育実習生として初めて子どもたちの前に立った時の自分を思い出していた。
練習したはずなのに口の中が乾き次の言葉がスラッと出てこなかった。
ここは教室ではない。実際の現場で自分より年上の生身の社会人を相手にしているのだ。緊張して当たり前だ。
この緊張感が少しでほぐれるように、まずボク自身が自然体のまま今できる範囲で精いっぱい応えようと思った。
16時まで、時間いっぱい目いっぱい楽しもう! …そんなつもりで次の言葉を待った。

検査項目は分担が決まっているらしく、一つの検査が終わる度に担当学生の変わるところを初々しく感じた。
・上肢、下肢の筋肉や関節の動きは年齢相応に普通のようだった。
・継ぎ足、片足立ちなどバランス系は相変わらず0~数秒しかできなかった。
・約10mの距離を杖なしで歩く検査では自分で思っていたよりスムースに歩けたと思う。

検査の合間や途中では、趣味や家族・家の周りの事など一般的なごく普通の会話も交わされた。
ボクの趣味は山歩きであること、それもあまり人の歩かない未知の道を開くことであること、
丹沢を中心にHPを開設していること、やはり丹沢を中心に本も出していることなども話題にあがった。
どんな小さな話でも熱心に耳を傾けてもらえることが嬉しかった。
何でも吸収しようとする若々しさを新鮮に感じた。

1時間はあっと言う間に過ぎた。実習の終わった後全員そろって病室に戻った。
「ありがとうございました。来週もよろしくお願いします!」
若いってそれだけで素晴らしい。自分の力で切り開いていく未来があるから。
この日の評価と記録は後日知らされるという。結果も楽しみだがそれ以上に来週の実習を待ち遠しく思った。

<実習2> 10/21(金)

この日はバランス機能や歩行時の様子、階段の昇り降りなどの検査・観察が行われた。
・膝関節の外旋角に左右差があるが、筋力も関節の動きも特に問題はない。
・片足立ち、継ぎ足は0~数秒程度。安定して立つためには介助が必要。
・その場回転(360°)はゆっくりならできる
・歩く時左手の振りが弱く右足が外を向く傾向がある。右方向に曲がる様子が見られる。
・歩く時の姿勢が前屈みになり左右へのふらつきも認められる。
 
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一般的な歩き方

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高齢者に多い歩き方

こんな現状から以下の事柄がボクの当面の課題となるのだろう。
〇歩行器を利用して安定した歩行姿勢(背筋を伸ばし歩幅を広くとる)を獲得すること。
〇そのために足元ではなく少し遠くにあるものを目標にして歩くこと。
〇杖や歩行器は軽く触れる程度とし肩や腰が左右に振れないよう意識しながらゆっくり歩くこと。
〇膝立ち歩きのように膝の上にしっかり体重を乗せること。
〇左右にぶれない"美しいゆったりした歩き"を心がけること。

食事の時間には同じテーブルに座っている患者さんどうしで「実習」が話題になることがあった。
「イヤ~、今日は4時間もあって疲れました。」という患者さんが多かった。
ST+OT+PT+実習、合わせて4回/日の活動。今回はPTの実習であることから筋トレも多く含まれる。
でもボクは通常のリハビリに1時間プラスされたことで「得をした」ように思った。
現在の状態が分かるばかりでなく課題をみつけることができるなんて、これ以上望むことがあるだろうか。

<実習3> 10/28(金)

SARA(Scale for the Assessment ando Rating of Ataxia)=サラ=と呼ばれる協調運動検査が行われた。
SARAとは「失調」を総合的に評価する検査とのこと。
後日送られてきた評価レポートの中から、課題としてあげられる項目を以下に記す。
・歩行:継ぎ足歩行はできるが10歩を越えることができない。
・立位:足を揃えて10秒より長く立てるが動揺する。
・言語:言語障害があるが、容易に理解できる。
これらの項目はこの文章を書いている現在(2017/03/15)も在宅リハビリの課題として残っている。

もう最後の日? 若い人たちから刺激を受ける「実習の時間」は楽しかった。
全体でもわずか3時間だったけれど、一緒に過ごした時間の証しを何か残したいと思った。
前々日(10/26)の夕方、地下の売店で色鉛筆とのりを買った。
26、27日の二日間、もみじの葉を写し絵にして短冊型に切ったノートの裏表紙に貼り「栞」を作った。
「セラピスト目ざして」 …ひと言書き添えたように思う。

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もみじの写し絵

作りながら、職業人としてスタートしたころの自分を思い出していた。
今よりずっと若かった20台前半の誕生日。
当時所属していた民間教育研究サークルの仲間からプレゼントされた一冊の本、
その裏表紙に寄せ書きが書かれていた。
「誕生日おめでとう」的メッセージの多い中で、
”教えるとは未来を共に語ること。=ルイ アラゴン=”
という一文が印象に残った。
共に未来を語り合う=子どもと共に育つ。この時以降このフレーズがボクの職業上の拠り所となった。

教える側を看護(介護or療法)、対象を患者さんに置き換えても意味は同じではないだろうか。
患者さんの目や表情、口ぶり、素振りから感情を読み取ることができたらどんなに良いだろう。
患者さんと共に『未来を生きる喜び』を語り合い共感し合えたらどんなに素晴らしいだろう。

患者さんの気持に寄り添い、
丸ごと受け止め、
共に成長できるセラピストに…。
そんな願いを込めながら。

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